2004-01-01から1年間の記事一覧

『怪の物』はBL(ボーイズラブ)か?

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon 世を避け一人淋しく暮す江間医師(もちろん男性)のもとに、夜な夜な怪しい影が現れる。 余は折々暗(やみ)の夜に起上がりて窓の外に目を配るに、勿論闇き為に何物をも見弁け得べくも…

今日のプログレ:Julverne "emballade..."

明大前のモダ〜ンミュージックで買いました。この店は拙豚の学生時代からやってる老舗ですが、最近は通信販売がメインということで店内はとても狭い。ジュルヴェルヌは70年代終わりから80年代初めにかけ活躍したベルギーのチェンバー・ロック(といっていい…

『怪の物』(「ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語」)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon ついに出た『ゴシック名訳集成』。そのなかでも一番のページ数を占めるのはおなじみ涙香先生の「怪(あやし)の物」です。原作者はエドモンド・ドウニーというイギリスの作家。イギリ…

KBB@Star Pine's Cafe

新Weird Worldを見ると倉阪鬼一郎さんはしきりにコンサートに行っている。拙豚もなんだか音楽が聞きたくなったので、とはいうもののクラシックは敷居が高すぎるので、プログレバンドKBBのライブに行って来ました。素晴らしい。ひたすら素晴らしかったです。…

『松本恵子探偵小説選』

松本恵子探偵小説選 (論創ミステリ叢書)作者:松本 恵子論創社Amazon 「何でも思ったまま口にしたり行動したりする」「一人で旅立たせたらどんな頓狂な真似をするか知れない」オテンバの故をもって「ケイスケ」と呼ばれていた*1松本恵子の傑作選である。ほと…

アルフレッド・ジャリ「アントリアクラスト」

Atlas Pressからジャリ*1の「アントリアクラスト」が届いた。これは機関紙「コレージュ・ド・'パタフィジック*2」に掲載されたジャリ12歳(第一稿)ならびに14歳(第二稿)のときの若書きの戯曲である。アルノーの伝記( ISBN:4891764945 )にさえ載っていない、こ…

マンガ版「アントリアクラスト」より。汲み取りポンプが大変なことになっている場面

コミケ当選!

二日目(8月14日(土))の西2“う”18aです。 新刊は、(もし間に合えば)、モーリス・サンド「迷路」(Maurice Sandoz "Das Labyrinth" 1941)が出るはず。ジャンルとしてはゴシック・ホラーだけれども、「アンチクリストの誕生」に負けずとも劣らぬ驚愕の…

エリアーデ幻想小説全集第2巻を読む(1)『十四年昔の写真』   ISBN:4878935766

『十四年昔の写真』はルーマニアからはるばるマーチン神父に会いに来た主人公ドミトルの物語である(物語の舞台は明示されていないが、たぶんエリアーデが当時いたシカゴだろう)。マーチン神父は四年前、ドミトルに奇跡を見せた。彼はいながらにして故郷の…

ゴシックよもやま話(5)『幽霊屋敷 (開巻驚奇 龍動鬼譚)』

ハーンが「英語で書かれた最上の怪談」というブルワー=リットン「幽霊屋敷」であるが、これは創元推理文庫「怪奇小説傑作集」の第一巻巻頭に収録されている。しかし、この巻には『ポインター氏の日録』『パンの大神』『緑茶』『猿の手』『炎天』『秘書綺譚』…

Wormwood Issue 2が出たよ

詳細はTartarus Pressのページにあり( http://homepages.pavilion.co.uk/users/tartarus/wormwood.htm#two ) 今度の目次も創刊号に負けず劣らず豪華絢爛である。もしかしたらアトリエOCTAが裏で手を回して編集協力しているのかもしれない。 Glen Calvino「白…

ゴシックよもやま話(4)『「モンク・ルイス」と恐怖怪奇派(小泉八雲)』

小泉八雲ことラフカディオ・ハーンは、1896年から7年間にわたり東京帝国大学教授として英文学を(もちろん英語で)講義していた。その講義録が恒文社版新著作集の6-13巻に収められている。全15巻の新著作集の過半を占めるという大変な分量であり、自らの知見を…

ゴシックよもやま話(3) オトラント城綺譚(現代語訳)

ゴシック名訳集成 西洋伝奇物語 伝奇ノ匣7 (学研M文庫)学研プラスAmazon 平井呈一翁の名訳と言えば十指に――いや二十指にさえ余ろうけれど、その中でもひときわ異彩を放つのがこの「オトラント城綺譚」である。不勉強にして擬古文訳の方は通読さえしていない…

ゴシックよもやま話(2)『吸血妖魅考』  ISBN:4480087826

最近文庫版も出た日夏耿之介『吸血妖魅考』は、日夏自身が序で記している通り、門下の太田七郎らの助力に負うところが少なくなかったらしい。またその内容もモンタギュー・サマーズの吸血鬼関係の二著の祖述(翻案)であるという。それならばこの本には日夏…

大鬼神 ISBN:4396207778

「茶髪クラニー」の第一作。作者独特の持ち味を生かしつつも、ジャンルの約束事に沿い手堅くまとめたウェルメイドな作品である(筒井康隆の作品系列で言えば「富豪刑事」に相当するかも)。クライマックスの緊迫感を一気に殺ぐ終盤のタイポグラフィに一番感…

天城一の密室犯罪学教程 ISBN:4535583811

これまでアンソロジーに収録された数編しか読んでいなかった拙豚にとって、この本は実質的な天城一初体験であったが―― 一読して腰を抜かした。これは断じて一部マニア向けの本などではない。日本ミステリ史の里程標となるべき作品集だ。実際、本書は二つの点…

ゴシックよもやま話(1)〜『地獄風景』

伝奇ノ匣のゴシック編は全三巻になるそうだ。7月には高原英理氏の「ゴシック的思考」も出る。まことに慶賀にたえない。この機会に拙豚もその驥尾に付し、ゴシック小説への偏愛をポツポツと語らん。 で、「地獄風景」であるが、巷ではこの作品は「パノラマ島…

「アンチクリストの誕生」後日譚

たそがれSpringPointに「アンチクリストの誕生」の感想が。ありがとうございます。拙豚はカーの例の短編を読んでいたにもかかわらず、あのラストには「こう来たか!」と驚いた。滅タンの炯眼おそるべし。 「アンチクリストの誕生」は、正月の暇にまかせてま…

『The End』/グザヴィエ・フォルヌレ ISBN:4575234885/ISBN:4772001646 ――天使について――

天使とは、もともと読んで字の如く天の使いであった。欧米の作品に天使が登場する場合、彼/彼女は大抵何らかのメッセージを携えてやってくる。しかし、その天使が日本に渡来すると、それは何か別の変なものに変貌したようである。ちょうどそれは、もともとは…

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。拙豚の今年の目標は次の二冊をなんとか夏冬のコミケに間に合わすことであります。スタニスラフ・プシィビシェフスキー 『アンドロギュノス』 (2004夏コミ予定)H.W.ツァーン 『ヴァルミュラーの館』 (挿絵=アルフレート・クービ…