正式なタイトルは『ギリシアの文学および宗教の中のデモンの研究』。黒死館では第三篇第二部の図書室の場面に出てくる。
然し、魔法本では、キイゼヴェターの『スフィンクス』、ウェルナー大僧正の『イングルハイム呪術』など七十余りに及ぶけれども、大部分はヒルドの『悪魔の研究』のような研究書で、本質的なものは算哲の焚書に遇ったものと思われた。(p.339)
タイトルからも分かるように、これは悪の化身や誘惑者としての悪魔の研究書ではないし、いわんやオカルトや魔法の本でもない。真面目な文献学的研究である。実際、全337ページのこの本のうち新約聖書の「人を誘惑する悪魔(サタン)」は317ページ目に至ってはじめて登場する。
全体の構成はこんな感じである。