『悪魔の研究(エチュード・スル・レ・デモン)』J.-A.ヒルド 1881


正式なタイトルは『ギリシアの文学および宗教の中のデモンの研究』。黒死館では第三篇第二部の図書室の場面に出てくる。

然し、魔法本では、キイゼヴェターの『スフィンクス』、ウェルナー大僧正の『イングルハイム呪術』など七十余りに及ぶけれども、大部分はヒルドの『悪魔の研究』のような研究書で、本質的なものは算哲の焚書に遇ったものと思われた。(p.339)

タイトルからも分かるように、これは悪の化身や誘惑者としての悪魔の研究書ではないし、いわんやオカルトや魔法の本でもない。真面目な文献学的研究である。実際、全337ページのこの本のうち新約聖書の「人を誘惑する悪魔(サタン)」は317ページ目に至ってはじめて登場する。
全体の構成はこんな感じである。

  1. デモンという語の起源と意義
  2. ホメロスにおけるデモン
  3. ヘシオドスにおけるデモン
  4. 悲劇の中のデモン。アラストル、エリニュス、召喚
  5. ディオニソスおよびエレウシスの密儀におけるデモン
  6. ソクラテス以前の哲学におけるデモン
  7. ソクラテスのデモン。プラトン的デモノロジー
  8. 悪しきデモン。デモンの衰弱と堕落
  9. 結語