LPHの耽美な生活(2) 白鳥虐殺者の巻

 
「ポドロ島」には理由らしい理由もなく動物を殺す人が出てくるが、その登場人物に似た行動をとるハートリー自身のエピソードがフランシス・キングの回想記に出てくる。
 

 他のおり、彼の長篇のうちでもわたしのお気に入りの一つ "The Boat" が話題にのぼった。主人公がエイヴォン河で舟を漕いでいたとき、白鳥におびやかされた場面のことをわたしは聞いてみた。というのは、あの河はハートリー自身が舟漕ぎを楽しんでいたところでもあったから。そう、あれは現実のできごとがもとになっている、とレズリーはこたえた。実際の白鳥は雄と雌だったが、だんだん迷惑になってきたので殺すことに決めたのだそうだ。「僕は従僕になんとかして片付けろと命じたが、にべもなく断られた。なぜかは分からない。労働者階級がよく動物に感じる感傷かもしれない――妻や子なら平気で殴るくせに、絨毯に粗相した仔犬をぴしゃりとやっただけで彼らはすごくおびえるじゃないか。だから自分でやらなきゃならなかった。眠れないときのために、医者が錠剤のソネリルを処方してくれていたので、それを何粒かとりだして、パンにくるんで小さく丸めた。本当は、雌より段違いにうるさかった雄のほうだけ殺したかったんだけどね。でもパンをばらまくと雌が真っ先にやってきて、あらかた呑みこんでしまった。まったく女って貪欲だ。午後になって、白鳥が家の前を流れ過ぎていった。二匹とも昇天してた。脚を空に向け逆さになって流れていったよ。とても奇妙な眺めだった! 君たちは想像できるかい」 居合わせた人たちは肝をつぶした。
("Yesterday came suddenly" p.202)

 
やっぱりハートリーって残酷な人だったんだ! と一瞬感じるが、たぶんそれは当たっていない。まずこのエピソードは、ハートリーの作り話だという可能性がある。(実際、上に引用した部分のすぐ前に、ハートリーがペンクラブのインタビューでいけしゃあしゃあと嘘をつくエピソードが出てくる) 本当のことだったとしても、「ポドロ島」でも猫を殺そうとした人は報いをうけているではないか。残虐さは独特の罪意識とセットになって彼の性格ひいては作品に奥行きをあたえているというのが本当のところだろう。

あるいはむしろ、上のエピソードで、ハートリーは白鳥を殺したかったというより、従僕に白鳥が殺されるところをむりやり見せつけてその反応を見たかったのではなかろうか。もし従僕が率先して白鳥を殺そうとしたならば、ハートリーはそれを止めていたのではないか。どうもそんな気がしてならない。