得体の知れないインタビュアー

Q&A

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以前宮部みゆきの『理由』をこのブログでとりあげたとき、何者ともわからないインタビュアーによるインタビュー形式がこの作品を成功させていると書いた。同じく「何者ともわからないインタビュアー」が出てくる小説では、恩田陸の『Q&A』も忘れがたい逸品と思う。これまで読んだ恩田作品の中ではベスト3かベスト5くらいには入る。

恩田陸という作家は。オーソドックスな小説を書く一方で、おそろしく実験的な、空中分解すれすれの作品も書くという不思議な作家である。後者の系列の作品では、あくどさと洗練が一つの小説の中でパチパチ火花を散らしている。受精卵を中途で割ると、ヒヨコになりかけのものが出てくるが、そんな感じの、作品ならざる不定形のものが作品へと形を取り始めた中途の状態のところを定着して作品にしたといった趣がある。

この『Q&A』はその典型例といっていい。連作短篇の形をとりつつ、いわゆるニュー・ゴシック的な筋立てに回収されようとするプロットを巧みにはぐらかし続けながら、最後にはいままでのあれこれを全部放り投げてアッと驚くところに着地する(いや着地はしていないか。むしろ空に消えるというか……)。内に秘められた暴力性というか破滅衝動というか、その異様さが忘れがたい作品である。