S蔵書との照合

「プヒプヒ版・奇想天外の本棚」の中で、澁澤龍彦蔵書と共通しているものはどれくらいあるだろうと思って調べてみた。雨の降る朝にはついこういうことがしたくなる。結果は十二冊中五冊。ただしベレンの本で澁澤書庫にあったのは『サバトの女王』ではなく『…

タレコミあり

昨日のブログを読んでくださった方からさっそくタレコミがあった。国書刊行会から近々アーサー・マッケンの自伝が出るそうだ。それも南條竹則氏の訳で!おそらく今頃は南條氏のもとに不幸の手紙が矢のように届いていることだろう。『あくび猫』によれば「あ…

プヒプヒ版・奇想天外の本棚

国書刊行会パンフレットによれば山口雅也氏が「製作総指揮」という、「奇想天外の本棚」があちこちで話題を呼んでいるようです。内容に関しては三門優祐氏のブログ深海通信 はてなブログ版が整理されていて便利です。こんなふうに実現可能性無視で好き勝手に…

『烙印』

今月の宇陀児第二弾も読み応えがあった。強いて集中のベスト3を挙げるとすれば以下のようになろうか。「決闘街」——良心の呵責からおかしくなりかけている二人が決闘を望みながら果たせず、やり場に困った不完全燃焼の感情が、ふとした偶然をきっかけにとん…

『本の雑誌10月号』

『本の雑誌』十月号の特集は「あなたの知らない索引の世界」。そこに「この本の索引がすごい!」という読者アンケートがある。そこでまたもやエゴサーチの鬼と化し、「ドレドレ誰か『記憶の図書館』を挙げてくれてるかな」と淡い期待とともに読んだ。だが当…

防腐剤無添加

『アーモンドの木』における和爾さんの訳文を爽快にしているのは、たとえば、「へスパー号ネタはさんざん出尽くした感がある」の「~ネタ」とか、「祖父の資産はほぼ溶けてしまい」の「(資産が)溶ける」のような、新しめの表現の躊躇ない使用だ。古典にこ…

『アーモンドの木』

楽しみにしていた和爾桃子さん訳のデ・ラ・メアが出た。さて今回、和爾さんはデ・ラ・メアをどう料理しただろう。この「料理する」は単なる決まり文句ではなくて、和爾さんの翻訳からは文字どおり原文を包丁でさばいているような感じを受ける。この包丁さば…

同人誌丸出し

最近はDeepLも改善されてきて、すくなくとも徳井や山里が「そうですね」「そうですね」と無意味な相槌を打つことはなくなった。しかしあいかわらず珍妙な翻訳を返してくることに変わりはない。近来の傑作はこれ。 Es scheine sich um einen ganzen Klüngel g…

フラクトゥール

今読んでいるのはドイツで1951年に出た稲生平太郎ばりの神秘小説。しみじみした佳作なので、コロナがいい塩梅に収まれば秋の文学フリマに出そうかなとも思っている。 上の画像はこの本の一部だが、ごらんのとおり、フラクトゥールというドイツ特有の字体で書…

『偽悪病患者』

少し前の角田喜久雄に続いて今度は大下宇陀児の短篇集が創元推理文庫で出た。全二巻の傑作選になるらしく、その前篇にあたる『偽悪病患者』は初期の名作を集めている……とつい書いてしまったが、名作というよりはむしろ怪作奇作実験作と呼んだほうが適切かも…

コトリの宮殿

小野塚力さんから超短編フリーぺーパー「コトリの宮殿」35号を送っていただきました。ありがとうございます。関根朝子さんの挿絵が点綴されたオールカラーの瀟洒な小冊子です。これが無料とは! 校正がずさんなのにバカ高い値をつけるどこかの同人出版とは大…

「北の橋の舞踏会」

北の橋の舞踏会・世界を駆けるヴィーナス (マッコルラン・コレクション 2)作者:ピエール・マッコルラン国書刊行会Amazon 『黄色い笑い/悪意』の感想ではついうっかりマッコルランの作風を「出たとこ任せ」などと書いてしまった。これはまったくの濡れ衣だっ…

マッコルラン・コレクション2

待ちに待ったマッコルラン・コレクションの第二巻が出た。今度の表紙は赤天鵞絨である。もしかしたら『黄色い笑い』が黄天鵞絨だったように、集中の「薔薇王」にちなんだ赤なのかもしれない。すると第三巻はどうなるんだろう。タイトルからすれば黒天鵞絨に…

叙述トリックとストリック

『狩場の悲劇』の解説を読んだら、これは叙述トリックの一種である、というようなことが書いてあった。いや、それはいくらなんでも違うでしょう、と自分のようなオールドファンは思うのだが、ネットで検索してみると、「叙述トリック」を「語り手=犯人」の…

『お住の霊』

お住の霊: 岡本綺堂怪異小品集 (932;932) (平凡社ライブラリー 932)作者:岡本 綺堂平凡社Amazon 湯田伸子のマンガに「ラジオ・ダルニー」というのがある。この作品では日本が第二次大戦で勝利していて、主人公の女性は大連(ダルニー)の放送局でディスクジョ…

星とハートリー

かぼちゃの馬車(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon まだ星新一を読んでいる。星新一もまた夏の読み物だと思う。扇風機と蚊取り線香がよく似合う。『かぼちゃの馬車』の最終話はL.P.ハートリーのある短篇と発想が同じなので驚いた。共通の願望でもあったの…

『星新一の思想』再説

星新一の思想 ――予見・冷笑・賢慮のひと (筑摩選書)作者:浅羽 通明筑摩書房Amazon 浅羽さんといえば、『星新一の思想』は実に面白い本で折に触れて読み返している。もちろんそこには浅羽節ともいうべき独特の文体を読む快感もある。そのあるページであるショ…

ふるほんどらねこ堂再訪

(これは昨日の日記の続きです)中井英夫生誕百年祭の会場を後にしてもまだまだ暑いので今度は四谷三丁目の「ふるほんどらねこ堂」に足を向けた。以前来たのは一か月ほど前のことだが在庫はがらりと変わっている。さすがに回転が速い。本に見入っていると特…

中井英夫生誕百年祭に参加

あまりにも暑いので家にじっとしておられず、恵比寿で昨日から催されているGalerie LIBRAIRIE6の中井英夫生誕百年祭に行ってきた。1941年に書かれた日記の一部と死の直前に書かれた覚書が並べて展示されていたのだけれど、筆跡がそっくりなのにびっくり。ふ…

奇しき因縁2

老人といえばもう一つ思い出したことがある。昨年十一月のことだ。もう八か月も前のことなのでそろそろばらしてもかまうまい。その年の九月に出した『記憶の図書館』をめぐって『週刊読書人』で西崎憲さんと対談をした(西崎さん、その節はお付き合いくださ…

奇しき因縁

www.youtube.com このブログを見てくれている人のなかでニュー・トロルスというバンドをご存知の方はどれくらいいるだろう。オーケストラと共演している『コンチェルト・グロッソ』というアルバムで有名なイタリアのプログレッシブロックバンドである。それ…

「百年はもう来ていたんだな」

今週の土曜から月末にかけて恵比寿のGalerie LIBRAIRIE6で中井御大の生誕百年祭が開かれるようです。LIBRAIRIE6のサイトによれば、「中井英夫 生誕100年」展 – 本多正一写真集「彗星との日々」と装画作家たち – を7月16日 (土) ~ 7月30日 (土) まで開催いた…

《仮面・男爵・博士》叢書・第2巻販売開始

皆進社からお知らせのメールが来ました。今宵皆さんをご招待するのは、うつし世の憂いを忘れさせる、華麗な犯罪ゲームの世界である。《仮面・男爵・博士》叢書の第2巻は、渡辺啓助の連作『空気男爵』に短編4作を併録。 監修=新田康 解説=横井司 ブックデザ…

『近代スピリチュアリズムの歴史』

新版 近代スピリチュアリズムの歴史 心霊研究から超心理学へ作者:三浦清宏国書刊行会Amazon 皆さんは「酷暑商法」というのを御存知だろうか。猛暑が続いて人々の脳みそがいい按配に溶けはじめるころ、特に名を秘す某版元は、それを狙ったように変な本をババ…

本邦初訳じゃないでしょ

ツイッター情報によれば綺想社というところからキラ=クーチの短篇集が出るらしい。「よしとに on Twitter: "アーサー・キラ=クーチ幻想綺譚集 壱『黒い鏡』 発行 : 綺想社 価格 : 5,000円 販売開始日:2022年7月3日 平井呈一も、愛した名匠 "Q"「魔法の影法…

『狩場の悲劇』

狩場の悲劇 (中公文庫 チ 3-3)作者:チェーホフ中央公論新社Amazon 登場人物一覧の中の「オーレリア」は「オーレニカ」の誤植だと思う。これはたぶん、「アクセル全開、インド人を右に! 」と似たケースで、(おそらく校正時に)悪筆で書かれた「ニカ」を「リ…

ふるほんどらねこ堂探訪記

昨日お昼前に都内某所の古書店で本を見ていたら、セドリ中の浅羽通明さんに遭遇。おお、ここも浅羽さんに荒らされていたのか! ここは200円とか300円とかの値段で良書が泉のように湧いて出てくるまさに魔法のお店であって、ここで山口剛著作集を1800円(つま…

「ボーイ・ミーツ・ミシマ」

三島由紀夫最後の言葉 (〈知〉のフロントラインへ-「図書新聞」セクション 1)作者:三島 由紀夫,古林 尚,高原 英理,樺山 三英,井上 隆史,柳瀬 善治,鳥居 万由実,松原 俊太郎武久出版ぶQ出版センターAmazon 「ボーイ・ミーツ・ミシマ」……そうか、ボーイがミシ…

ヴェデキントの特質

NLQ

「女性に金玉を噛まれたこともある」と4月9日付の当ブログでお伝えしたフランク・ヴェデキントの小品「女侯爵ルサルカ」が、岡和田晃さんのご厚意でナイトランド・クオータリーの次号に載ることになりました。6月29日発売予定です。ヴェデキント作品の…

楕円の顔

小説を読んでいると、美女の形容として、「楕円(Oval)の顔」というのがたまに出てくる。このブログで去年とりあげた『最後の審判の巨匠』にもこの形容があった。そして今翻訳している小説にもこの形容が出てくる。常套句というほどではないにせよ、少なくと…