ボルヘス『審問』に驚くラルボー


 

先週の洋書まつりで買った本の中にヴァレリー・ラルボーの伝記があった。謎のダブリ本の群れの中の一冊である。著者はベアトリス・ムスリという人で1998年にフラマリオンから出ている。

この本によればボルヘスはラルボーに『審問』を献呈したらしい。『続審問』ではなく、生前は再刊を許されなかった『審問』のほうである。国書のボルヘス・コレクション中の『無限の言語』に抜粋収録されているあの本である。

『審問』を一読して驚嘆したラルボーは1925年にある雑誌にこんなレビューを載せたという。

「バークレーの哲学、サー・トマス・ブラウン、エドワード・フィッツジェラルド、ジェイムズ・ジョイスについての研究あるいは覚書、ドイツ表現主義と、それからトレス・ビリャロエル、ケベード、ウナムーノ、カンシノス・アセンス、ゴメス・デ・ラ・セルナについての研究。W・H・ハドソン、ライナー・マリア・リルケ、エデュアルド・デュジャルダン、マックス・ジャコブ、そしてスペイン、イギリス、フランスの古典の引用。これら研究の内容それ自身とこれらの名が出てくる文脈は、このアルゼンチンの批評家が、十九世紀の先人たちを呆然とさせ、おそらくは憤慨させるであろう知識(それも原典の)を持っていることをわれわれに示している」

著者ムスリによれば、これはフランスでもっとも早くボルヘスに言及したものであるそうだ。さすがヴァレリー・ラルボー。だてに悪徳を罰せられない人ではない。