ふるほんどらねこ堂探訪記

昨日お昼前に都内某所の古書店で本を見ていたら、セドリ中の浅羽通明さんに遭遇。おお、ここも浅羽さんに荒らされていたのか! ここは200円とか300円とかの値段で良書が泉のように湧いて出てくるまさに魔法のお店であって、ここで山口剛著作集を1800円(つまり一冊300円)で買った話は去年十一月の日記に書いた。

ただしこの店は、朝の開店直後に行かなければならない。そうでないとめぼしい本は根こそぎ買われたあとなのである。遅かったりエルロック・ショルメスなのである。まあ浅羽さんみたいな猛者が出入りしていれば当然のことだろうけれど。

それにしても昨日は暑かった。こんな日は古本屋巡りにかぎる、とばかりになおも数軒古書店や喫茶店を巡り歩いているうちに、ようよう夕方になり、おもむろにふるほんどらねこ堂に足を向けた。

ふるほんどらねこ堂は以前から興味はあったのだけれど、千駄木のブーザンゴと同じく、夜しか開店しないというところがネックになって、加えて新型コロナの流行も手伝って、今まで行く機会を逸していた。しかし目の前で本をセドられては、これは黙ってはいられない。いざ追撃! とばかりに敵の本拠に乗り込んだわけである。

扉を開けると噂にたがわずメイドさんがいた。しかし店主が忙しく立ち働き、客のためにコーヒーをいれたりしているのに、メイドさんは悠然とソファに座って読書している。どちらが主人かわからない。そういえば買った本もメイドさんの手から手渡してもらった。実は女主人が経営している店だったとかいう星新一的なオチが用意されているようでもある。

段ボール箱に本が無造作にルーズに詰め込まれていて一見ゆるい感じだけれど、よく見ると駄本なしの恐ろしい品ぞろえである。しかも、たしか八冊くらい買って払った金額は2300円。しかも6円おまけしてもらった。これではセドリ元の価格より安いのではなかろうか。いったいどうなっているのだろう。古書人外魔境にはまだまだ汲めども尽くせぬ謎がある。