いつまでもあると思うな国書本

マルセル・シュオッブ全集

マルセル・シュオッブ全集


 朝日新聞夕刊で礒崎純一さんの「編集者がつくった本」の連載が昨日から始まった。漏れ聞く噂によればあの山尾悠子さんまでが宣伝に駆り出されているらしい。

 その第一回目は『マルセル・シュオッブ全集』。「一シュオッブ」という単位まで作られたというあの伝説の記念碑的出版である。この高価な書物が(覚えている限りでは)たちまち三版まで版を重ねたというのは、それほど待ち望んでいた人が多かったという証だろう。フランスではどうだか知らないが、日本ではけしてシュオッブは「忘れられた作家」ではなかった。矢野目源一の『吸血鬼』が出て以来、あるいは日夏耿之介が『海表集』に「小児十字軍」の一節を入れて以来、その讃仰者の列は今にいたるまで連綿として絶えていなかったと思われる。

 しかしこの『マルセル・シュオッブ全集』今後もずっと在庫があるとは限らない。一度品切れになれば、この贅を尽くした書物がふたたび世に見えるという保証はない。いまだ手元に置いていない人は手遅れにならないうちにぜひとも、とおせっかいながらお勧めするしだいである。