たべおそ7

文学ムック たべるのがおそいvol.7

文学ムック たべるのがおそいvol.7

  • 作者: 斎藤真理子,岩井俊二,銀林みのる,櫻木みわ,飛浩隆,西崎憲,松永美穂,小山田浩子,高山羽根子,柳原孝敦,熊谷純,佐伯紺,錦見映理子,虫武一俊,梅?実奈,東雅夫,チョン・ミョングァン,ハイミート・フォン・ドーデラー,吉良佳奈江,垂野創一郎
  • 出版社/メーカー: 書肆侃侃房
  • 発売日: 2019/04/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『たべるのがおそい vol.7』(書肆侃侃房)がぼちぼち書店に並びだしているようです。なんでも今号で終刊であるとか。悲しいことですが、西崎さんの八面六臂の活躍を思えば、こちらにも力を割くのはなかなか難しいのかもしれません。

綺羅星のような執筆陣にまじって、不肖わたくしも翻訳で末席を汚しております。この短篇「ヨハン・ペーター・へーベル(1760-1826)の主題による七つの変奏」は、以前このブログでとりあげたスタニスワフ・レムのアンソロジーにトリとして入っていた作品です。これを読んだときには、あまりにも怪作なので腰を抜かしたものです。

ああ、この異様すぎる読後感はとてもひとりでは持ちこたえられない! ぜひ人と分かち合いたい! という思いが余って今回「たべおそ」に載せてもらいました。いわば自分の体にできた気色悪いカサブタを、「ホラホラ見て」と人に見せびらかしたくなるような気持ちでしょうか。ちょっと違うか……いやだいぶ違うかも。

かつて山野浩一さんが主宰されていた雑誌『NW-SF』を愛読していた方なら、こういうのも面白がってくれるかもしれません。しかし『NW-SF』が消滅してすでに40年近くたった今、かくのごとき怪短篇を載せてくれるのは世界広しといえどレムのアンソロジーと「たべるのがおそい」くらいでしょう。はじめにも記しましたが今回の終刊はほんとうに残念です。