転校した友人

文学ムック たべるのがおそい vol.2

文学ムック たべるのがおそい vol.2


ここに収められた不思議な作品群(ストレンジ・ストーリーズ)を、十四、五のときに転校してそれきり会えなくなった友人の消息を――風の便りに――聞くような感じで読んだ。
挿絵がまたその茫漠とした感じに実によくマッチしている。
ほとんどが遠い遠い、それこそ赤方偏移が起こりそうなくらいの話で、いくら手をのばしても届きそうにない。近づくには十四、五のころに――まだ自分とかれらが未分化であったころまで時間を遡るしかないような気がする。そして実際そこに連れ戻すようなものがあって、それが各作品の力であるように思う。
巻頭の津原記久子さんの『私たちの数字の内訳』は、少し前に出たアルルトの『怒りの玩具』と響きあうようなところがあって面白い。