さまよえるユダヤ人


いわゆる「さまよえるユダヤ人」は、「サラゴサ手稿」「放浪者メルモス」「緑の顔」「悪魔の霊液」など、いくつもの幻想文学の名作に暗示的または明示的に顔を見せるのだけど、主役を張ることは少なく、たいていは作品の中をかすめるように通り過ぎるだけだ。「さまよえるユダヤ人」が主役というのはボルヘスの「不死の人」くらいではないかしらん。ユジェーヌ・シューに「さまよえるユダヤ人」というそのものずばりのタイトルの小説があるけれど、タイトルになるくらいだから、やはり主役なのかな。

いっぽう吸血鬼は登場すれば必ず主役の座に居座り、脇役としての存在を想像することは難しい。吸血鬼が脇役というのは「怪物くん」くらいしか思い浮かばない。同じく不死の存在なのに、この差はどこから来るのだろう。

それはともかく、この「ボリバル侯爵」でもさまよえるユダヤ人は有能なバイプレイヤーを務めたあとで、どこへともなく去っていく。ただこの作品ではアンチキリストと絡んで登場していて、その関係がどこから来たのか興味をひかれたので、「さまよえるユダヤ人」関連の研究書を何冊か覗いてみた。下の画像はその中の一冊。この本は「エンサイクロペディア・ジュダイカ」にも参考文献として書名があがっているので、研究書としてはたぶん代表的なものであろうと思う。



それにしてもプロヴィデンスブラウン大学といえば……



なんとなくどこかで聞いたような大学名だ。この大学もやはり付属図書館にはいろいろ変な本が置いてあるのだろうか。