一ページごとに闇を

ボリバル侯爵

ボリバル侯爵

ついに販売が開始してしまった『ボリバル侯爵』。主な書店にはすでに並んでいるようだ(たとえば丸善&ジュンク堂の場合はこんな感じ)。ここまで来るともはや「一冊でも多く売れてくれ」と祈ることしかできない。なにしろこれがある程度売れてくれないと、次のペルッツが出せないから。

この小説で物語を引っ張っていくのは二人の死者だ。一人は女性で、物語がはじまったときにはすでに死亡している。もう一人は男性で、こちらは開巻まもなく死んでしまう。にもかかわらず、他の(生きている)登場人物は、この二人にくらべると幽霊のように影が薄い。この二人に操られる人形も同然ともいえる。

そんなこともあって、これを訳していたときに頭にチラホラよぎっていたのは牧神社の発刊の辞だった。



「一頁ごとにその闇を顕在させつつ」……おお、そんなことが本当にできれば……

<おまけ>
同じ本に挟み込まれていた『アーサー・マッケン作品集成』宣伝パンフレットの一部。作品紹介がどことなく妙なのが時代を感じさせる。