年に一度のお楽しみ


待ちに待った年に一度のバカミスがいよいよ登場! 表紙のなんともいえぬ脱力感(←褒め言葉)がいやがうえにも期待をそそる。今回は八王子にある七色に彩られた、女王の君臨する館で惨劇起こるそうな。わりと詳しい情景描写から察するに、台湾とか中国の八王子(そんな地名があるかどうか知らないけれど)なんかではなく、普通に東京の西のほうにある八王子のようである。なぜこんなところが舞台となっているのか。多少でも土地勘のある、そしてある種の趣味を持つ人ならば、たぶんおしまいまで読んでウムウムと頷くのではなかろうか。

そして本作では、まことにやむを得ぬ事情で職を辞した上小野田警部に代わって、終盤で作者の倉阪氏が自ら探偵役として謎を解く! 残念ながら秘書は連れて来ていないようなのだが――あるいはツイッターでせんせいの宣伝に忙しすぎたのだろうか。ぜひ次作では「ミーコ姫も大活躍!」*1してもらいたいものだ。
もちろんおなじみの暗号も縦横に発揮されている。例によって著者近影がそこはかとない解読のヒントとなっている。

真相解明のシーンでは「国書刊行会」という固有名詞*2がしみじみする感慨をもって現れる。さてこれは同社にとって名誉なことか不名誉なことか? にわかには決し難いような気がするのう。ふおふおふおふお。

*1:『紫の館の幻惑』初版帯に書いてあった惹句

*2:巻末に「固有名詞に一致もしくは酷似したものがあったとしても、それは偶然の一致とお考えいただければ幸いです」とあるので、偶然の一致なのかもしれない。