Saiに出会えざるの記


[Sai]第3号が満を持し上木されたりとの噂あり。やれうれしや。RH嬢はあいもかわらず大暴れに暴れているかしらんと期待に胸を轟かせつつ神保町は東京堂ふくろう店をおとなえども、これはしたり、博捜に博捜を重ねど[Sai]は影もかたちもなし。店員の方を煩わし探してもらうこと十五分ばかり、やがて恐縮千万の体で云うには、入荷せしは記帳あるゆえ確かなことながら、現物は杳として行先不明、霧と化せしか、烟と化せしか、何人も知るあたわずと。あわれなるかな[Sai]。いみじくも『仮面』、『聖杯』、『半仙戯』、その他もろもろの先人の轍を踏み羽化登仙、はかなくも南柯の夢と化したか。これを好意的に見るなら、おそらくは大好評のゆえをもって須臾の間に完売となったのであろうけれど……。

よんどころなく買いそびれていたドノゴ・トンカの創刊前夜号を購う。創刊前夜号! おおまだ見ぬ友よ、夜明け前の闇の中で、辻潤の、正岡容の、玉文が読めることを共に寿がん。これが値千円とはあまりに安し。元手はその千倍も万倍もかかっていよう。高橋信行氏、郡淳一郎氏、扉野良人氏、その他畏敬すべき書痴の面々に幸あれかし。