一足遅れの英訳本

エーゴン・フリーデル「タイムマシンの旅」の英訳版The Return of the Time Machineがきのう到着した。残念ながらコミケには間に合わず、翻訳の参考にできなかった。これはドナルド・A・ウォルハイム監修のDAWブックスの一冊として1972年に発行されたもの。Karel Tholeという人の挿絵が四枚入っているが、わざわざ紹介するほどの出来ではない。でも同じ人の手による表紙絵はなかなかいい。ちゃんと内容に即していて、左には二人のエジプト人、真ん中には天上のロンドン、右にはグローリアが描いてある。
ところで、デフォントネーの「星またはカシオペアのΨ」がやはりDAWから出たのはこの三年後、1975年のことだ。この頃ウォルハイムは非英語圏の妙な作品に力を入れていたのだろうか。
ウォルハイムが序文を書いている。この本は彼の知る唯一の「タイムマシン」の続編だそうだ*1。しかしこの序文は全体として食い足りない。ウエルズ風の時間概念と本書との差異や、「近代文化史」の三巻でも気合を入れて書かれているエネルギーの概念と本書の「時間エネルギー」とのかかわりの考察が欲しいところだ。ヘルムホルツらによって提唱されたエネルギー概念が、ドイツ圏のある種の文学者に与えたインパクトは、考えてみると面白いものがあると思う。種村季弘のシェーアバルト論「私の自転車修行」とか。
 

*1:もちろんそれは1972年時点での話で、その後スティーヴン・バクスターの「タイム・シップ」とかが出ているわけだが。