エンブレム関係新刊

英国におけるエンブレムの伝統―ルネサンス視覚文化の一面

英国におけるエンブレムの伝統―ルネサンス視覚文化の一面

 

英国の著作家、フランシス・クァールス(一五九二―一六四四)は一六三五年に「寓意画集」Emblemsを、一六三八年に「人生の秘文字法」Hieroglyphics of the Life of Manを公にした。後者において、彼が書いているところによれば、<文字の発明以前にあっては、神は秘文字においてその本性を打ち明けた。事実また、もしも彼の名をことほぐ秘文字や寓意画が存在しているのではなければ、天、地、各人とはそも何物か>。

…とG.R.ホッケ「文学におけるマニエリスム」で語られているクァールスの専門家による論文集。著者はロイ・ストロングに師事した人らしい。上の引用だけ見るとオカルト的思想を持つ人に見えるが、あにはからんや、本書で描写されるクァールスはどちらかといえば敬虔な信仰者である。このホッケやマリオ・プラーツのように、綺想(コンチェッティ)とか驚異(メラヴィリア)とかいう言葉でエンブレムを語るのはそろそろ時代遅れになりつつあるのだろうか。