「ケルベロス第五の首」第五号の謎  ISBN:4336045666


8月1日の日記で書いた疑問のうち、

  • 「わたし」は4番目なのになぜ「第五号」と父に呼ばれるのか?
  • タイトル「ケルベロス第五の首」は何を意味するか?

CAVE CANEMここに答えらしきものが書いてある。しかし拙豚はこんなヌルい解答じゃ満足できんぞ! 今日は拙豚の考え(妄想に近いが)を書いてみる。 

まず第二話にでてくる「影の子たち」だが、CAVE CANEM(Robert Borski氏)の解釈では、これはアボの一族であるということになっている(ここのShadow Childrenの項を参照)。しかし、第二話を素直に読めば、これは地球からやってきた人たちととるのが自然ではないか? 「アトランティス」とか「アフリカ」とか「ポアテム*1」なんて固有名詞が出てくるし・・・
で、老賢者の言によると、その地球からやってきた人は五人いたらしい(p.154)。そして、その五人目の名は「狼(Wolf)」という(p.170)。
ケルベロスの五つの首とは、この五人の原‐地球人のことを指し、その五番目であるウルフ一族が「第五の首」なのではないか。そして第一話に出てくる「わたし」の家系がこのウルフ一族の末裔であるとすれば、「ケルベロス第五の首」と呼ばれてもおかしくない。
つまり、「ケルベロス第五の首」は「わたし」という個人を示してるのではなく、「わたし」の一族を指していると考えるのである。「わたし」の苗字がWで始まることは、p.16でほのめかされているので、Robert Borski氏の言うように、これがWolf(あるいはWolfe)であることは大いにあり得る。
同じように「第五号(Number Five)」とは、「わたし」個人の名でなく、ウルフ一族の集合的な名ではないか。


#ところで第二話の一挿話「穴に落とされたときに見るドッペルゲンガー」(p.145以降)は伊藤人誉「人誉幻談 幻の猫」の第一話にソックリなのでちょっとびっくりした。もちろん偶然の一致以外の何物でもなかろうけれど・・・

*1:荒俣宏氏の表記。翻訳文中では「ポアテズム」。昔のフランス語はアクサン・シルコンフレックスの代わりにsを使ってたみたいだから(estre=être、mesme=même)、荒俣説の方が正しいような気もする。