行ってきました*1。若島正氏が矢継ぎ早に繰り出すミステリ的(あるいは「チェスタトン的」と言ったほうがより適切か)な「驚くべき真相」に圧倒されぱなしの一時間半でした。いま覚えているのだけを順不同で書くと
- 第三話で出てくるノートの「鋭い刃物で切り取られた3ページ」は、実は第一話の「わたし」の愛用の外科用メス(p.80)で切ったもの*2。
- 「スイッチを入れるような・・・音」(p.88)は実は録音機のスイッチを入れた音
- p.322で窓から投げられたテープは、実は第一話で録音されたテープである(p.26他)
- 第二話で引用された十字架上のヨハネは、英語で言えばSt.John on the Cross。そして引用の詩は獄中で書かれたもの。これは第二話が、第三話に出てくるサント・クロワの囚人ジョン・マーシュが書いた話だという説の傍証となる。(サント・クロワのクロワ(Croix)は英語で言えばCross)
- 第二話では第一話と第三話が合わせ鏡のようになって嵌め込まれている。砂歩きと東風はそれぞれ第一話の「わたし」と第三話のV.R.T.に相当する。
- 砂歩きと東風*3は互いが互いの夢を見ている(「匣の中の失楽」みたいなものか。p.109あたりで急に主人公が転換することがそれで説明できる)
一方柳下毅一郎氏の話ではヤード・ポンド法とメートル法の使い分けが目ウロコでした。またやはり氏の話の中では「単なる謎ときのテキストとしては読まず、小説としてのふくらみを味わってほしい」という意見に激しく同感しました。これは(特に第一話に関しては)本当にそうだと思います。