『新編 怪奇幻想の文学2 吸血鬼』

かつての名アンソロジーを今に蘇らせるシリーズの第二弾『吸血鬼』がもうすぐ出ます。不肖わたくしも巻頭の中篇「謎の男」の訳で参戦しております。
 


 
この「謎の男」を書いたK. A. フォン・ヴァクスマン(1787-1862) は当時は人気作家だったみたいですが今はほとんど忘れられているようです。ただ「謎の男」だけは、おそらくモンタギュー・サマーズ編の『ヴィクトリア朝幽霊譚』に"The Mysterious Stranger, from the German"と題された英訳(1860)が収録されたおかげもあって未だバリバリの現役です。仏訳 (2013)西訳 (2022)も今でも新刊としてアマゾンで手に入ります。

主人公は純真だけどちょっと頼りない青年。それから勝ち気でわがままな幼なじみの美少女と、片腕が機械仕掛けの頼もしい相棒がいます。なんだか既視感ありまくりの設定です。ほんとうに十九世紀ドイツの小説なのでしょうか。

その美少女も襲われ役だけに甘んじてはいなくて、吸血鬼に最後にトドメを刺すのはこの幼なじみなのです。そのあいだ主人公の青年は何をしているかというとほとんど何もしないでオロオロするだけ。「うる星やつら」でいえば諸星あたるみたいな役どころといえましょう。ほんとうに十九(以下略

下楠昌哉氏も解説で「読みどころ溢れる大活劇で、吸血鬼が当時のエンタメを支える怪物の一翼を担っていたことがよくわかる」と褒めてくださっています。12月1日発売予定です。乞うご期待!

【11/26追記】下楠氏のお名前を誤記しておりました。大変失礼しました。