フラクトゥール

今読んでいるのはドイツで1951年に出た稲生平太郎ばりの神秘小説。しみじみした佳作なので、コロナがいい塩梅に収まれば秋の文学フリマに出そうかなとも思っている。
 

 
上の画像はこの本の一部だが、ごらんのとおり、フラクトゥールというドイツ特有の字体で書かれている。俗に亀の子文字ともヒゲ文字とも称されるあれである。慣れさえすればなかなか味のある字体であって、これに親しむと普通のフォントが使われた本は逆に味気なくて読む気がしなくなるほどだ。

しかしこの「慣れさえすれば」というのがクセモノで、なかなかもって慣れ親しむのは難しい。たとえば "s" と "f" がまぎらわしい。上の画像だと、上から二行目、左から二番目の単語の一字目が "s" である(so)。上から五行目、左から二番目の単語の二文字目が "f" である(Ufer)。よく似ているけど、「横棒が右に突き出ていたら "f" 」と覚えておけばまず間違いない(活字がすり減っていないかぎり)。

さらに難易度が高いのが大文字の "B" と "V" の見分け方である。上の画像だと上から三行目、左から二番目の単語の最初の文字は "B" (Bollwerkartige)、同じく上から三行目、左から三番目の単語の最初の文字は "V" (Vorsprünge)である。

これをどうやって見分けろというのか。日本の崩し字みたいにカンで読むよりしかたがない。