関口存男「雨傘論」で和文独訳のネタに使われた朝日新聞の社説は、はたしてどんな文脈で書かれたものか? それを調べようと図書館に縮刷版を見に行きました。「ははあヒマを持てあましているな」と人は思うかもしれません。あえて否定はしません。
当該号の一面を見て深く納得。ヒトラー総統が爆弾宣言をぶちかましているではありませんか。
「ヴェルサイユ条約の一方的廃棄に対してはローマ条約、ロンドン宣言がいずれも反対を表明しているのにことさらの共同宣言無視の挙に出たヒトラー総統一流の無軌道外交には欧州各国政府とも呆然自失の態である」
つまり第一次大戦に負けたドイツはヴェルサイユ条約によって軍備を制限されていたのですが、その条約を一方的に破棄して、「さあこれからは思う存分軍隊を増強しますよ! 文句があるならベルリンにいらっしゃい。オーホッホッホッ!」と世界に宣言したのでした。
「雨傘論」に引用された社説はそのニュースを受けてのもの。条約は「実際不可能なるを強いんとするもの」とか書いてあってドイツに同情的です。
それにしても傍若無人な無軌道外交というと、どこかの国の大統領を思わせるところがありますね。あの大統領には総統ほどのカリスマ的魅力がないのが不幸中の幸いといえましょう。コールリッジは『バイオグラフィア・リテラリア』(邦題『文学的自叙伝』)によれば、「大きな事件がおこるたびごとに、私は過去の歴史のなかにそれに似た事件を努め」、それは現状の判断に大いに有益だったということです。まことに歴史は繰り返すものであります。
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図書館まで行ったついでに「ぶちねこ便」と「Prime」の最新号も一部ずつもらってきました。どちらも市立図書館の発行によるもので、前者はC市の中学生が、後者は高校生が、書きたい放題のことを書いています。プヒ氏はこれを毎月読みたいがためにわざわざC市に引っ越してきたという噂もあります。