陥穽と振子

 とある編集者の方のウェブサイトにあった「今月の予定」を、すごい仕事量だな相変わらず大変そうだなとか思いながらボーッとながめていたのだが、何秒かのタイムラグのあと、とつぜんハッと気がついた。「今月入稿予定が二冊」って、一冊は自分の担当なのでは! いやいやいやいや、忘れてたわけじゃありませんよ。いちおう初稿はできあがっているのでとりあえず頭から追いやっていただけです。

 そうなのです。八月になったからにはノンビリとしてはいられません。八月末締め切りの本が二冊ありますから。と書くと、人は何も締め切りを重ねなくてもよかろうと思うかもしれません。もっとじっくり仕事すればいいのにと。

 なぜそんなにあせって仕事するのかというと、それはもちろん秋の文学フリマ用の新刊をつくる時間を確保するため*1――いやいやいやいや、もちろんそれもあるけれど、より根源的な不安があるのであります。

 それは一言で言うと、「今年なら出せる本も、来年には出せなくなっているかもしれない」という不安です。事実、中堅書店の棚幅など見ると、海外文学のマーケットが恐ろしい勢いで縮小しているのが、手にとるようにわかります。特にわたしの専心している怪奇幻想ジャンルなどは「本の雑誌」にもめったにとりあげられませんし、世間的には「なくてもなくてもいい」ジャンルとみなされているのではないでしょうか。

 まあ感じとしてはポーの「陥穽と振子」で振り子がだんだん下がっていくあんな感じなんです。だから出してもらえる本はなるべく早めに出したいと思うわけです。

 ということで今月は二冊分完遂予定! 乞うご期待! ついでに秋の文学フリマの新刊もご期待ください。

*1:あと9/15締め切りのROMの原稿もなんとか出したい