最後から二番目の消夏法


毎日暑いですね。皆さんはいかがお過ごしですか。国書刊行会さんもこの暑さには参っているようです。


でもこんなときにこそ逆に酷暑! 酷暑! と騒ぎたてて、納涼本として『江戸怪談文藝名作選』なんかを売りまくればいいのに……商売気がないことです。江戸期怪談なんてこんな猛夏の日々に読まなくていったいいつ読めというのでしょうか。いま『江戸怪談文藝名作選』を読んでおけば、「ああ、むかしあの暑い中をフウフウいって読んだなあ」という思い出がきっと一生残りますよ。できれば夜になって風が出てきたころクーラーを切って部屋中の窓を開けて読めば趣もひとしおかと。
清涼井蘇来集 (江戸怪談文芸名作選)

清涼井蘇来集 (江戸怪談文芸名作選)


さて消夏法として最高なのは怪談であることは論をまちませんが、二番目にすばらしい消夏法とは何でしょう。
ジャーン! それは何をかくそう、古書店巡りであります。暑さでフラフラになりながらこちらの古本屋からあちらの古本屋へと巡りあるく味は、一度味わったらやみつきになりますよ。いやほんとに。客があんまりいないのでゆっくり本も見られますし。
なかでもおすすめなのが神保町のはずれにある古書いろどりです。
なぜおすすめなのかというと、まず店内のクーラーが壊れていて、外と暑さがあまり変わらないのです。全身から汗をふきださせながら古書をためつすがめつ選ぶ楽しみが満喫できます。
第二に、とある方の蔵書がドサッと入ってホラー系を中心とした洋書が質量ともにおそろしくあることです。この話を聞いたのが一か月ほど前だったので、もう目ぼしいものはなくなってるかなと思っていたのですが、あまりそんな感じでもありませんでした。きっとあまりにも本がたくさんありすぎてたぶん買っても買っても本がなくならないのでしょう。 "maddening rows of antique books(人を発狂させる古書の並び)"というラヴクラフトアウトサイダー」の一節が実感されます。
なにしろあの「ウィアード・テールズ」が30年代のおいしいところを中心に100冊くらい無造作に積んであったり、あちこち掘り返すとロバート・ブロックの初版本とかピーター・ヘイニングのアンソロジーが山のように出てきたり、あと部屋の隅のほうにはヒッソリと隠すようにして、ここに書くもはばかるようなマニア垂涎の本が天上近くまで積んであるのですよ。
とりあえず迷いまくって12冊買ってかえりました


左の三冊はアッシュ・トリー・プレスのA.M.バレイジです。これだけあればこの夏を乗り切るには十分だと思いますがどんなもんでしょう。まあ足りなくなったらまた古書いろどりさんに買いにいけばいいんだし……