スキー文


全世界で百万以上リツイートされている元大統領オバマのツイート:


前後の脈絡からいって、二番目のツイートの"People must learn to hate"は「人々は憎むことを学ばなければならない」という意味ではなくて、「『憎む』ということは学ばなければできるものではない」つまり誰に教えられもしないのに黒人などを憎むものはいない、という意味であろうと思う。"People must learn in order to hate"と書くか、あるいは語順を変えて、To hate, people must learn. としたらもっとわかりやすくなるかもしれない。

ところでこのようなことをドイツ語でいう場合、ふつう能動態は使わない。「スキー文」という特殊な受動態を用いる。もっともスキー文というのはウナギ文とかモナリザ文とかにならって今考え出した用語で、おそらくこのサイト以外では通用しないと思う。それではなぜスキー文と呼ぶかというと、独和辞典のなかで一番売れているという噂の「アクセス独和」に、スキーを使った例文で載っているからだ。ちなみに小学館の独和大辞典ではスキーではなくて自動車運転になっている。

スキーは習わなければできるようにならない


つまり"ナントカ will gelernt sein."という並びで「ナントカは学ばなければできるようにならない」という意味になる(直訳すると「ナントカは学ばれることを欲している」)。この用法は〈ドイツ語の神様〉関口存男の大講座下巻には独立項目として出てくるから、関口信者ならすべからく(誤用)知っているはずのものである。

物はなんでも一応は見習う必要がある


なんで今こんなことを書いているかというと、この十月に出る予定の弊訳書(ハードカバーのほう)にもこの用法が出てくるからだ。

喜びは習わなければできるようにはならない


「喜びは習わなければできるようにはならない」と、ここだけ読めばエマニエル夫人のような小説が連想されるが、さて実情はいかなるものだろうか。乞御期待! ということで本日の日記は実はステマみたいなものであった。