第二部も今日買ってきた。
第一部は読了したが、異能を持つ主人公・いきなり別れを切り出す妻・世俗のシステムを掌握する実業家・セックスフレンド・おしゃまな少女・超自然的存在・などなど、春樹キャラオールスターズ総出演みたいな感じだった。ユングの元型のような、あるいはコメディア・デラルテの面々のような彼らが、自分の役割を過不足なく演じ、互いに衝突することもなく一致協力して粛々と物語を進めていく。ディクスン・カーなら70ページくらいで済ませるような〈冒頭の謎〉が506ページかけてゆるゆる展開していく。
だがこのゆるゆる感はけして悪くない。当時の人たちはアン・ラドクリフなんかをこんな感じでゆるゆる味わって読んでたんだろうなあ――意外な真相なんかちっとも期待しないで――というその感覚を今の時代で追体験できるからだ。訳しようによっては『ユドルフォの怪』もこんな調子でいけば今出しても案外いけるかもしれない。なんにせよ〈長大な物語〉の命脈がまだ絶えていないことは喜ばしいことだと思う。