こぶし団地で拾ったもの


歌人・玲はる名さんが古書店古書つくしを開業したというので早速行ってきました。
行き方はとても簡単。中央線国分寺駅から西部なんとか線に乗ってまずは所沢駅か航空公園前駅まで行きます。所沢なら東口から出ている航空公園前行きバスに乗って「こぶし団地入口」で降ります。航空公園前なら所沢駅東口行きバスに乗って、やはり「こぶし団地入口」で降ります。降りてすぐそこのところに、「こぶし団地案内」という大きな看板があるので、それで「こぶし団地11−22」の見当をつけていけばOK。でも時間に余裕があれば、古本屋ツアー・イン・ジャパンの中の人みたいに、航空公園前駅からのんびり、周囲の景色を愛でつつ歩いて行くのが圧倒的に正解だと思います。バスといっても30分に一本しか出てませんしね。

こぶし団地は「団地」というより「長屋」といいたくなるような可愛い建物が、櫛の歯みたいにきれいに並んでいるところで、ほとんどの家の扉は閉じているのですが(住宅だから当たり前)、表通りに面した一軒だけは大きく戸を開け放ち、その前には均一本さえ並んでいます。だからお店の場所は楽勝で分かります。

店の中は田舎のおばあちゃんの家にお邪魔したようなアットホームな雰囲気でした。細やかな神経が行き届いた棚は見るだけで楽しいです。本は文学関係メインなのですが、中に一列、「笑いを取るための棚」みたいのがあって、笹川良一とか小沢一郎なんかが並んでいます。でもそれさえも端正なたたずまいなのが店主のセンスを窺わせて凄いと思いました。

なかなか掘り出し物も多そうで、今ではめったに見ない同人誌版『幻影城の時代』が破格の二千円という価格で売ってましたよ。シュオブ『乱世綺譚集』とか今ではもう絶版になったエディション・プヒプヒの本もありました。あとは「○考さんに買わされた本」というのが安く売ってたり(亀鳴屋の本とか)。

で、結局買ったのは次の二冊。

 塚本邦雄 青海波(私家本)
 塚本青史 水無月祓(河出書房新社)

『青海波』は不勉強にしていままでその存在さえ知りませんでした。一人称「私」で語られるあたかも自伝のごとき小説です。ああまた塚本病がぶりかえしてしまう……。『水無月祓』はずっと探していたのだけれどなぜか今までめぐり合えなかった塚本青史氏のミステリー短篇集。挿絵も青史氏が描いています。あと一冊玲はる名さん自身の本をオマケしてもらって大ホクホクで帰宅したのでありました。