Nという町で

C線でちょっと郊外に出たところに、Nという町がある。この町からは真偽不明の不思議な噂がいろいろと漏れ伝わってくる。獰猛な猫が人を襲うとか、道のまんなかに象が浮くとか、ラーメンにパイナップルを入れて食べるとか、行列の絶えぬ洋食店があるが、どんな料理が出るのか誰も知らぬとか、アリャマタコリャマタ先生を不倶戴天の敵とみなす男が住むとか……話だけ聞くと、いまだ文明の光が十分射さぬ、古いたとえで恐縮だが、川口探検隊が勇躍して赴きそうな蛮地としか思えない。

君子危うきに近寄らず。いつもの拙豚なら、かくの如き剣呑な地には断じて足を踏み入れぬのだが、まずいことにその町は、古本屋がたいそう充実している。そしておりしも本日から、その古本屋の一軒で、空前絶後の催しがおこなわれるという。かくなる上はしかたがない、虎穴にいらずんば虎子を得ず、一人川口浩と化して、決死の覚悟で乗りこむことにした。

まさに百花繚乱の本のなかで、迷いつつ買ったのが下の一冊



もれなくカードがついています。一冊一冊全部異なるのがすごい! カードを集めるためだけに買って、本は捨てる人も出てきたりして……