推理小説なんかくそくらえだ

 
引き続きビオイ=カサーレスの日記より引用(1961年5月28日)
 

 "Vea y Lea"のために推理小説について何ページか書く。僕たちは何年も前に『第七圏』のカタログのために準備した序文を剽窃することにした。ビオイ「なんてよく書けているんだろう。今はとてもこうは書けないよ。僕らは衰退しているんだ」 ボルヘス「いや違う。今じゃ僕らは推理小説のことなど真面目に考えられなくなったんだ。人は過去に生きる。推理小説なんかくそくらえだ」

 
ボ氏もこんな暴言が親友の日記に書きとめられているとは夢にも思わなかったことだろう。いわんや二十一世紀になって極東のブログで晒されようとは……

ビオイ=カサーレスが「よく書けている」と自画自賛した『第七圏』序文は、『ビオイ=カサーレスのABC』(2001)という本に収録されている。あと単行本未収録作品を集めた『博物館』(2003)という本にも入っている。それからアルゼンチン推理小説論集『紙上の殺人』(上の画像)にも入っている。もちろん増補版ボ氏推理小説書評集にも収録予定。