謎の虎狩り

まだダゴベルトを読んでいる。ところで皆さんは「ほぶらきん」というバンドをご存知だろうか。




どうです、なかなかいかした(いかれた?)バンドではありませんか。一時は小学生がメンバーに入っていたのだが、あまりのアホらしさに「僕もうやめるわ」と言って脱退したという伝説もある。たしか「ほぶらきん全集」みたいなCDも出たはず。拙豚は「行け行けブッチャー」という曲が好きなのだが、YouTubeに音源はないようだ。

なんでこんな話になったかというと、このほぶらきんに「インドの虎狩り」というレコードがあって、ジャケットの虎は猫にしか見えないのだが、それはともかく、いま読んでいるダゴベルトにインドの虎狩りが出てきたのでほぶらきんを思い出したという次第。

路上で発見された死体の腕にはロルニョン(柄がついていて手で持つ眼鏡)の金鎖が絡みついていた。ダゴベルトは眼鏡屋から話を聞き、そのロルニョンはさる若い貴族が恋人にクリスマスプレゼントとして贈ったものであることをつきとめる。そこでダゴベルトはその貴族を訪問するのだが、不在であった。父親と二人で住んでいるはずなのだが、その父もいない。門番に話を聞くと、父子はいきなり「インドに虎狩りに行く」と言いだし、ろくな準備もせずアタフタと旅立ったのだという。しかも、その旅立ちは、死体発見のわずか数時間後になされている。これはどうしたことだろうと思ったダゴベルトは次にロルニョンを贈られた恋人に話を聞きに行く……。

という筋なのだが、ここでいかにも異様なのは貴族父子の「インドに虎狩りに行く」という口実だ(もちろん事実の可能性もある)。エッ!と思って目をこすってよく見たが、やはり「インドに虎狩り」と書いてある。日本語でいえば「雉を撃ちに行く」みたいな慣用句かとも思ったが、どうもそうでもないようだ。第一次大戦前のウィーン貴族はそんなに気軽に、思い立ったらすぐさまという感じでインドに虎狩りに行ったのだろうか。それともここは笑うところなのだろうか。
これがたとえばウッドハウスなら、インドに虎狩りと書いてあってもニヤニヤするだけで済ませられるだが……なにしろエムズワース卿とか黒豚飼ってるし……。でもダゴベルトの場合、笑っていいものかどうか、どうもよくわからない。ダゴベルトってもしかしたらユーモア探偵小説なのだろうか。あるいは、先の600個の鍵穴の件といい、この作者の人は真面目に変なことを書く変な人なのかもしれない。