Had I But Known

 

 
 両世界日誌によれば、『パラドクシア・エピデミカ』ではironyを「複眼視」と訳しているそうだ。しまった。拾い読みしかしてなかったので気づかなかった。もし事前に知っていたら『青い彼方への旅』の後記で言及できたのに……。これは何が何でも時間を作って全部読まねばならんね。

 9月11日の日記で言及した「シラバス氏」読了。殺人も盗難も、まったく犯罪らしきことは起こらない不思議な小説だった。これではミステリーはおろか犯罪小説とさえ言えないと思う。でも面白い。キャラクターの面白さでひっぱる小説だ。よく言えばマイクル・イネスのある種の小説に近いかもしれない。ともかくこういう作品を「犯罪小説叢書」に堂々と入れてしまう編者の人(ディーター・パウル・ルドルフという人)には尊敬を禁じえない。