株式市場化する古書価格

最後の審判の巨匠 (晶文社ミステリ)

最後の審判の巨匠 (晶文社ミステリ)


暇だから(というわけでもないけれど)、わが『最後の審判の巨匠』のアマゾンマーケットプレイス価格を毎日見ている。今現在最安値は613円。しかしこの価格は一日数十円の割りで下落傾向にある。
いままでの観察だとこの価格が300円を切ったあたりでわっと買い手があらわれて在庫払底、その後ぽちぽちと定価の半額(1000円)あたりの値をつけて新しい売り手がまたあらわれて、でもその値では売れずに、価格がじりじりと下がっていく、の繰り返しである。
つまり株式市場での価格形成と似通ったメカニズムが働いているのだ。

今のプライスリーダー(価格先導者)は「魚雷堂」という古本屋さん。 この店が10円単位で価格を下げると他の出品者が1円ずつ下げた価格をつける、というのを飽きずに毎日くりかえしている。(ちなみに魚雷堂と名がついていても『古本暮らし』『活字と自活』の荻原魚雷さんとは関係ないと思う。)
この魚雷堂のホームページを見ると、店主の本業は株式売買であるらしい。ああやっぱり! 株式売買のテクニックを古本の価格付けにも応用しているのだろう、たぶん。

あと「空売り」というのもある。本を持ってないのにマーケットプレイスに出す。それも定価の倍額くらいの値をつけて。
注文が来ると本屋から新本を買ってきて送る。定価と売値の差は丸儲けで、在庫を持たないから売れ残りのリスクもないという、まことに賢い商売である。
版元品切だけれども流通在庫はある本に対してふつう使われる手だが、『最後の審判の巨匠』の場合、まだ新本が定価で買えるのにこれをやっているとおぼしき人が二人ほどいる。版元在庫がもうほとんどないのを見越して、早めに手を打っているのだと思う。
やでやで……。「まちぼーけー、まちぼーけー」と歌ってやりたくなるではないか。