まただまされた。

新世界崩壊 (講談社ノベルス)

新世界崩壊 (講談社ノベルス)


まずは帯に苦言を呈しておきたい。
『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』が受賞したのは「バカミス☆アワード」ではない。正しくは「世界バカミス☆アワード」。世界中のミステリを対象にした賞なのである。なんと『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』は、パブロ・デ サンティス『世界名探偵倶楽部』や、カール・ハイアセン『迷惑なんだけど?』や、エリック・ガルシア『レポメン』を蹴落としたのだ。
この三作のどれかひとつでも読んだ人なら、これがどんなに怖ろしい、もとい、名誉なことなのか分かってもらえると思う。

その「世界バカミス☆アワード」受賞作家にふさわしく、今回の事件はアメリカとイギリスを巻き込んでインターナショナルにかけめぐる。

ああ、しかし、拙豚はまたしてもしてやられてしまった! その敗因は、探偵役であるところの上小野田警部の性格を甘く見ていたところにある。「信頼できない語り手」ならあちこちにいるけれども、信頼できない探偵役というのがこの世に存在するとは……。それもここまで信頼できない探偵が……。この一点だけでも、つまりポワロとシェパード医師の一人二役をなしとげたという一点だけでも、本書はミステリの歴史に足跡を残すことができるかもしれない。