エディション・イレーヌを応援しよう


さんぬる日、アトリエ空中線の間奈美子さんとお話をする機会があった。いろいろと興味深いことをうかがったのだが、なかに一つ、これはとても聞き捨てならぬ!と義憤にかられたことがあったのでここに書く。

ここをお読みの皆様なら、エディション・イレーヌから2003年1月に刊行されたエドガー・ソールタス<紫と美女>短編叢書は先刻ご存知であろう。宇野亜喜良のイラストをあしらった、アトリエ空中線の粋をつくしたといってもいいほど瀟洒な造本を誇るあの叢書である。

この叢書は全七巻のはずなのだが、2003年に三冊刊行されたきり、七年を閲した今になってもとんと続刊の話を聞かない。首を長くして待ちながらも、訳者は生田耕作門下の文章に異様に凝る面々ゆえ、おそらくは苦渋を重ねいまだ完成稿にいたらないのであろうと拙豚は勝手に想像していた。

ところが間さんの話では実情は全然違うとのこと。訳稿はあらかた完成しているそうである。

ではなぜ続刊が刊行されないのかというに、ひとえに既刊三巻が全く売れぬためであるらしい。一冊千八百円という価格がたたったのか、ソールタスの知名度の低さがたたったのか、同じ書肆から出たヘンリー・ミラーの『母、中国、そして世界の果て』やアナイス・ニン『巴里ふたたび』は完売間近だというのに、ひとりエドガー・ソールタスだけは「ピクリとも動かない」(間さんの表現)。ヘンリー・ミラーアナイス・ニンの本はどちらも千二百円。六百円の差はこれほどまでに購買意欲に影響するものなのか。

ともあれ、ソールタスの既刊が売れないことには続刊は永久に日の目は見ない。心ある諸氏はぜひとも一本を購われんことを。「三冊も買うのは物入りだ」と思われる方は、「太陽王女」がお勧めである。ソールタスって誰?という人は書肆の紹介を読めよかし。

一般の書店にはなかなかないと思うけれど、地方小出版センター扱の本を取り扱っているところならなんとかなるはずです。ウェブならおなじみのマルドロールで扱っています。ここは店主が退院されたばかりでまだ本格稼動には間があるようですが、細々となら注文を受け付けているようです。

[3/20追記]おおっ殿下の応援が! ありがとうございます。ちなみにエディション・イレーヌの本はこれらの書店で扱っているようです。エディション・イレーヌって何? という人はとりあえず「るさんちまん 3号」を読んで腰を抜かすがよい!