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- 作者: チャッタワーラック
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/11
- メディア: 単行本
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「だが、私の記憶ではあの家の娘は大女だぞ」
「はい、使用人からの聞き取り調査でも非常な肥満体であったことは確認しております」
「分らないな。そのキムトーという娘が太っていることと、今回の事件に何の繋がりがあるんだ」今度はラオーが口をはさんだ。
「だって、おおありだろう」私は大声で言った。「これは単純な失踪事件じゃないということがわからないのか。この若い刑事さんの話じゃ、現場は荒らされた様子はなく、不審物としてこの紙だけが残っていた」
「確かに何の痕跡も残さずそれほど大柄な人物が誘拐されることはありえない」
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発端を読む限りでは、これはユーモア小説ではありえない。冗談を言いあっている感じでもなさそうだ。この令嬢が「何の痕跡も残さず誘拐されることはありえない」ほどの体重の持ち主であるのを、刑事たちは誰一人疑っている様子はない。「単純な失踪事件ではありえない」ほどの肥満体ってどれくらいの肥満体なのだろう。
誘拐されたお嬢さんは、拙豚の知り合いで言えば、図書館にお勤めの○○○さんみたいな、持ち運びに少なくとも三人は要するほどの体格なのだろうか。1930年代のタイには、そういう恰幅のいいお嬢さんは珍しくなかったのだろうか。それとも、これは何かの叙述トリックなのだろうか。