いろいろ2

 
一年ちょっと前に話題にしたケセン語のハンディな入門書が出た。版元の内容紹介はこちら。ケセン文字の解説はおろか、なんと練習問題までついているという。ううんどうしよう・・・引き帰すなら今しかないが・・・
  
長く入手困難だった「ラデツキー行進曲」の新訳も出た。

ゆるやかに没落していくハプスブルク帝国が、三代に渡る主人公一家と皇帝フランツ・ヨーゼフとの二重の焦点のもとに描かれていく。

天性の小説家が己の力を存分に発揮して作り上げた、安心して浸りこめる傑作だと思う。今回印象深かったのは主人公たちにのべつまくなしにぶつけられる、三島由紀夫ばりの警句の数々だ。

つきすぎもせず離れすぎもしない作者と作品の絶妙な距離感がすばらしいのだが、(読者ではなく)作者のカタルシスを拒むそういうスタンスにはどこか危険なところがあるのかもしれない。このあと何冊かの佳品を残し作者ヨーゼフ・ロートは四十四歳の若さで(三島より一歳下だ)、自分の書いた物語に詛われるように異郷に倒れることになる。