いろいろ

ひょんなことからトーマス・オーウェンについて書くことになった。オーウェンといえば戦前から戦中にかけてのベルギー探偵小説黄金時代と切って切り離すことができない。ちょうどわれらの倉阪鬼一郎氏が折からのミステリブームに乗ってデビューしたように、オーウェンが小説を発表するきっかけを作ったのもこの時ならぬミステリブームのおかげだった。このときオーウェンにミステリ執筆を勧めたのが、誰あろうスタニスラス・アンドレ-ステーマンその人である。もっとも人も知るようにオーウェンは終戦と同時にミステリから足を洗ってしまって変なコントばかり書くようになるのだが。――というようなことを、確か松村喜雄氏の「怪盗対名探偵」で読んだ記憶があるのだが、今確かめてみるとそんなことはどこにも書いてない。あれは夢だったのか。