早稲田古書店街の怪臭

先日書いた「幻の『左川ちか文聚』がヤフオクに出品」「幻の『左川ちか文聚』続報」が大変なアクセス数を記録している。もしかしたらツイッターで言及されたのだろうか。この問題への世間の関心は存外高いのかもしれない。

ところで『左川ちか文聚』を売っている浅羽通明さんのふるほんどらねこ堂では、珈琲や菓子ばかりか麺まで提供しているという。喫茶店を兼ねた古本屋はいくつかあるけれど、麺まで提供するというのはこの店だけではあるまいか。ああ早稲田の古書店だなあと昔を懐しく思い返した。

といっても早稲田の古書店で麺を提供していたわけではない。そうではなくて、四十年くらい前の早稲田古書店街では、昼飯どきになると、いくつかの店のおやじは麺とか丼物を抱え込んで食事をしながら店番をしていたのだった。そのために店内には古本の臭いと食べ物の臭いが混じった何ともいえない怪臭がたちこめる。

もっとも今はそんな怪臭の店はすべて姿を消していまった。代わっておしゃれな店が何軒も台頭してきた。古書ソオダ水とか、二階から地上に降りてきた丸三文庫とか、改装後の五十嵐書店とか。そもそも昼前から店を開けるところが少なくなったから、無理して店内で食べる必要もない。

ふるほんどらねこ堂も一度お邪魔したいものだと思う。あの懐かしい臭いがたちこめているのだろうか。