死せる生田生けるプヒ氏を走らす


 
その後また三日月書店に走り生田旧蔵書を今度は八冊買ってきた。死せる生田、生けるプヒ氏を走らす。
 
生田といえばある種の人たちには蛇蝎のごとく嫌われているらしい。むかし『東京人』だったかの神保町古書店特集で某老舗古書肆の店主がインタビューされていたが、「どんな恩人でもいったん死ぬと悪しざまに言う」とか盛んに生田を罵り、「うちではあの人の本は思い切り安く売るんです」とまで語っていた。言う方も言う方だがそれを記事にする方もする方である。さらにむかし『幻想文学』という雑誌に「堕ちた偶像」という、ケンカを売っているとしか思えない記事が載ったこともあった。
 
かくのごとく性格には問題のあった人かもしれないが、本はなかなかいい本を持っていた。「人を憎んで蔵書を憎まず」と古人も言っているではないか。

ところで先日話題にしたマッコルラン・コレクションだが、とある秘密結社の極秘情報によって、箱のギュス・ボファの絵はマンダラゴラではなくマルセル・シュオッブであることが判明した。ボファがシュオッブをイメージして描いた絵ということらしい。フランスではシュオッブはこんなふうに受け取られているのだろうか?

こう書いたあとで秘密結社より連絡あり。「シュオッブをイメージして描いた絵」ではなく「シュオッブの作品をイメージして描いた絵」とのこと。それにしても日本で考えられている「シュオッブの作品のイメージ」とは相当かけ離れているのでは。