夫婦ゲンカの写真

いよいよ明後日にせまる『両シチリア連隊』の発売。それを記念して、ローマン・ロチェクという人が書いた伝記『アレクサンダー・レルネット-ホレーニアの九つの生』から、作者の写真を二枚紹介しましょう。

これが青年時代のレルネット=ホレーニアです。まるで三島由紀夫の小説にでも出てきそうなかっこよさです。「ウィーン中の女の子が追っかけまわしていた」というのも、さもありなんとうなづけます。

これは70歳過ぎのレルネット=ホレーニア夫妻。写真の下に「ペンクラブの部屋での夫婦ゲンカ」と書いてあります。「だからお前は」「なによあなたこそ」みたいな声が聞こえてきそうな迫真性がありますね。

寡聞にして夫婦ゲンカの現場を撮られた作家というのは他に知りません。こんな写真が撮られてしまうということから、オーストリアの人たちがこの作家をどんな目で見ているかが、なんとなく感ぜられるではありませんか。「畏敬」とか「崇拝」とかそんな感じでないことは確かでしょう。たとえばトーマス・マンにこんな写真があることはちょっと考えられません(いやその前に、人前で夫婦ゲンカなどしないでしょうけど)。どちらが強いのかはこの写真からはよくわかりませんが、奥さんの方もなかなか負けていない感じではあります。