好きよキャプテン

二人のキャプテン

二人のキャプテン


ヴェニアミン・カヴェーリンといえば、大昔に妖精文庫の第三期で『師匠たちと弟子たち』というすばらしく訳の分からない本が出て、その後どこかから黄色い表紙の本が出て(タイトル失念)、今回出たこれが三冊目、でいいのかな? (と思って調べてみたら児童文学畑で『地図にない町で - チズニナイ市奇談』という本も出ているようだ。これはまったくの未見。存在すら知らなかった)

解説によると社会主義リアリズム万歳のソヴィエト体制下で、幻想小説の執筆が難しくなって、やむなく書いたリアリズム小説だという。だが読んでみるといわゆる社会主義リアリズムの臭みは全然ない。これが社会主義リアリズムならスティーブンスンの『難破船』なんかはバリバリの資本主義リアリズムだ!
複数の筋の衝突具合は、往年のカヴェーリンの作品や、あるいはホフマンのある種の作品さえ思わせる。さすがゼラピオン兄弟会出身だけのことはあります。

訳者は50歳近くにロシア語を志し、ロシア人の個人教授を受け、分からないところを質問しながらこの750ページ二段組の小説を翻訳したのだという。そのヴァイタリティには頭が下がる。「ニック・カーテール」とか「ガッテラス船長(ヴェルヌ)」とか、大瀧先生にグーで殴られそうな表記も散見するけど、まあご愛嬌というところでしょう。