楽しい妖怪手品

 
著者の定義によれば「妖怪手品」とは、「幽霊出現などの怪異現象を種や仕掛けによって人為的に作り出す娯楽」。西洋種で言えばテリー・キャッスルとかマックス・ミルネールの世界です。ちょうちんの胴部分をいくつもつなぎ合せてろくろ首を作るとか、子どもを池の中に漬けておいて河童にするとかいう楽しい悪ふざけがくりひろげられる。いやはや、いつの世にもアホなことを大真面目にやる人というのはいるものですね。しかしそれだけで一冊の本を書くというのはもっとすごい。

圧巻は終章の江戸川乱歩を扱ったくだり。乱歩の江戸期手品本蒐集と、二十面相の悪癖ともいえる「妖怪手品」を結びつける手際にはうなった。本格ミステリのサプライズみたいな読後印象だった。