山吹色の誘惑


何週間か前に、ミステリベストのアンケートが舞い込んできた。答えれば山吹色の何かをもらえるという。いそいそと取り組んだのは言うまでもない。
添付された候補リストを見ると、海外もので既読は40冊弱(お終いまで読まずに投げたのも含む)あった。この程度の冊数からベスト10を選んでいいものかという疑問は当然あるものの、山吹色の誘惑には勝てない。それにしてもこの候補リストは、「ミステリ」の領域をかなり広く解釈してくれているのがありがたい。リストを作成してくださった方に感謝。これが狭義のミステリばかりだったら、とても10冊は選べなかった。ちょっと考えて選んだのは結局次の10作。                         

  1. アニマルズ・ピープル(インドラ・シンハ)
  2. 顔のない軍隊 (エベリオ・ロセーロ)
  3. ライヘンバッハの奇跡(ジョン・R・キング)
  4. イルストラード(ミゲル・シフーコ)
  5. ミステリウム(エリック・マコーマック)  
  6. ズリイカ・ドブソン(マックス・ビアボーム) 
  7. わたしは英国王に給仕した(ボフミル・フラバル)
  8. ルナ=パーク(エルザ・トリオレ)
  9. 死をもちて赦されん(ピーター・トレメイン)
  10. 寅申の刻(ロバート・ファン・ヒューリック)                     

1-3は誰が読んでも面白いはず。4は『ウロボロス偽書』、5は『枯草熱』タイプのミステロイド。6は大量死理論を考察する上での必読文献。7は早川の「異色作家短編集」に入っていても違和感がない「奇妙な味」連作。8は存在しない女優を主演に据えて映画を撮ろうとする監督の話。『夏と冬の奏鳴曲』の前日譚とも言える。9はようやく訳出されたシリーズ第一作を、そして10はシリーズ完結を記念して。以上10作すべてに共通しているのは、きわめて上質の訳文ということ。とくに2と7がすばらしい。