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![小説すばる 2010年 11月号 [雑誌] 小説すばる 2010年 11月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51AxjK3V6hL._SL160_.jpg)
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/10/16
- メディア: 雑誌
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「ばらばら死体の夜」第二回。
息の詰まるような禍々しい雰囲気だった前回とちがって、この回ではやがてバラバラ死体になるはず(たぶん)の中年男の無気力な日常が語られる。彼には胎内回帰願望のようなものがあって、古本屋の二階の「きたないちいさな穴」にひたすらに魅かれていく。
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小説に彩をそえているのが藤田新策画伯の挿絵。先月は「さぼうる」、そして今月(11月号)は「ミロンガ」と、ストーリーとともに神保町風景を点綴させていく趣向は、あたかも濹東綺譚における木村荘八の挿絵のごとし。
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濹東綺譚……そう、この「ばらばら死体の夜」は神保町古書街に玉の井遊郭を幻視し現前させた小説でもある。
それをやすやすと可能にする筆の冴えをぜひ味わってほしい。大江匡とちがって、われらの主人公(吉野解という名だ)は無事に逃げ切れることはないだろう。
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