今を生きるコリア

 
 そろそろ『ナツメグの味』が書店に並びはじめるころだ。神保町の書泉グランデにはもうあった。三省堂にはなかった。東京堂はすでに閉まっていた。わたしの訳はまあアレだけれども、他の方々の翻訳はすばらしくて、既訳では見えなかったコリアの側面を浮かび上がらせるものだと思う。

 巻頭の「ナツメグの味」は、ほんの少しだけ意見が違う二人のオタクの物語。こういう場合に何が起こるかは、おそらく洋の東西を問わない。次の「特別配達」は、フィギュア萌え族(?)の悲劇。最初に出てくる電波文人生相談の翻訳は、あまりに真に迫っていて思わず笑ってしまう。この作品とか、すこし後に出てくる「魔女の金」には、クラニー先生の『田舎の事件』を思わせるものがある。

 売れてくれるといいなあ。売れてくれますように。