闇よ、つどえ

 
初期の異色作「ブラッド」の再来のように人が死ぬ。死ぬ。死ぬ。ばたばたと原因不明のまま死んでいく。一章に一回は殺人の場面があり、しかも今回は必ずペアとなって死ぬから、単純計算で死者数は「ブラッド」の二倍だ。

しかしあにはからんや、これは端正な本格ミステリだった。ヴァン・ダインの二十則も第11条と第14条を除いて(これらはホラー仕立てだから仕方ない)律儀に守られているし、結末近くには読者への挑戦状までついている。

あえて分類するならミッシング・リンク・テーマということになるのだろうか(あまり自信なし)。チェスタトンの某短編のアイデアの長篇化、あるいは東欧某作家の擬似ミステリに伏線を入れて本格に仕立てあげたものというか。

でもちょっと手がかりが大盤振舞すぎたような気もするなり。