千冊一冊物語

世界文学あらすじ大事典〈1〉あ~きょぅ

世界文学あらすじ大事典〈1〉あ~きょぅ

やっと地元の図書館が入れてくれたのでぱらぱらめくってみた。ドイツではRomanführerといって、この手のあらすじ本は何種類も出ており、レクラム文庫にも分厚い二冊本が入っている。しかし日本ではここまで本格的なものははじめてのような気がする。
本書はアメリカで出た本が雛形になっているそうだが、この原書には要約者の意見が混入していたり、あらすじが歪曲されたりしていたため、結局かなりの部分を日本で独自に書き換えたそうだ(本書前書きより)。「あまりにいい加減である」「こんなクズを出してどうするのか」「原著者の良心が信じがたい」というような身も蓋もない会話があったのだろう、きっと。
それにしても凄い。「アフリカの印象」や、(ピンチョンの)「V」まで整然とあらすじが書いてある! それも判断できる限りではほとんど完璧に。ただ、編者の前書きにストーリーとプロットの違いが説明されているが、ここに書いてあるのは「アフリカの印象」や「V」のストーリー(〜ねたばらし)ではあってもプロットではないやね。
だから、読書感想文提出などの目的でこの事典を引き、本物を読んだふりをするとたちまちばれるはずだ。勘ぐると、アメリカの原書はそういった意味でも使用に耐え得るようにあえて「実用的」に作ってあったのではないだろうか。それを払拭した日本版は、ちょうどあの荒俣御大の「世界幻想作家事典」みたいな、読んで楽しむ事典の色合いを強めていると思う。