『秘められた光の家』(アーサー・マッケン/A.E.ウェイト)

ええとええと。とんでもない本が出ましたねえ。注文したらちゃんと届いたので、確かに出版はされているようですが、いまだに自分の眼が信じられませんよ?
このThe House of the Hidden Lightなる本は何かと言うと、まあ一言で言えばマッケンとA.E.ウェイトの往復書簡集です(ただしオリジナルの書簡にかなり手がいれられているらしいです)。1904年発行の初版は三部しか刷られなかったそうです。つまりこれは両著者と彼らの友人の印刷業者フィリップ・ウェルビーのためだけの本であって、その他のいかなる者によっても、この本は読まれることを想定されていないということですね。
三部のうち、マッケンの本は行方知れずになり、ウェイトのは彼の遺族の死後ある個人コレクターが入手、そしてウェルビーの本はアレスター・クロウリーの収集家ジェラルド・ヨークの手に渡ったそうです。ヨークはこれを「黄金の暁教団(ゴールデン・ドーン)」関連の文献だと思って入手したらしい。ところが読んでも何がなんだかチンプンカンプンなので、クロウリー御大に見せたそうです。ところが古今東西の神秘思想に精通してるはずのクロウリーにも分からなかった。「あーあのアースウェイトのバカが書いたもんだから、どうせたわけた寝言みたいなもんだろ」とでも思ったのかもしれません。このクロウリーが見た本は今はロンドンのウォーバーグ(ワールブルク)・インスティテュートに所蔵されていて、今回の底本にもなったそうです。
クロウリーを当惑させたことでも分かるように、長い間これはゴールデン・ドーンに関連したオカルト文献と見なされていたらしいです。ところがR.A.ギルバートの研究によって、実はこれは、巧みにカモフラージュされたマッケン、ウェイト両者と二人の女性のアバンチュールの記録であるらしいことが分かった。ちょうど島田荘司『眩暈』に出てくる荒唐無稽な手記が、実は現実の殺人事件を記した実録だったようなものですか?

そろそろ神保町の北沢書店にも入荷してる頃だと思いますので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。直接注文される方は拙豚アンテナからTartarus Pressのサイトに飛ぶといいです。日本Amazonでも取り扱ってるようだけど本当かな〜(<何回か痛い目にあったらしい)。例によって小部数(初版350部)なのでお早めに