超自然的恐怖原理主義者たちに抗して

巷で「ホラーより怖い」と人気大沸騰中なようなので自分も一本を贖った。いつなんどき変な圧力がかかって出版差し止めとか回収とかになるかもわからないから。



もしかすると超自然的恐怖原理主義者の方々から、「こんなものをホラーと呼ぶとは何事ぞ! 恐怖は超自然に限る! サンマは目黒に限る!」と非難の礫が飛んでくるかもしれない。しかしちょっと待ってほしい。フィクションのホラーは、自分にとっては、恐怖というよりは、ポール・サイモン歌うところの "Hello darkness, my old friend" というようなものに近いのだ。

だが買ってみたものの、あまりに恐そうなのでまだ一ページも読んでいない。というか本さえ開いていない。なにしろ表紙だけで十分お釣りが来るほど恐いから。

誰だった名前を失念したある女性漫画家は、少女のころ楳図かずおや古賀新一などのホラー漫画の大ファンだったが、あまりにも読むのが恐ろしいため、親に頼んでいちばん恐いシーンをあらかじめマジックで塗りつぶしてもらっていたそうだ(どなただったろうか? マジックで塗りつぶされた漫画雑誌の絵ははっきり記憶にあるのに肝心の名が出てこない。もう年かもしれない)。この本の表紙もそんなふうにマジックで塗りつぶしたくなるものがある。