文学フリマ金沢で販売する旧刊


いよいよ今度の日曜。新刊以外に持っていく本を簡単にご紹介します。書名のあとの数字は初版発行年、解説のあとの数字は持っていくおよその冊数です。


アレクサンダー・レルネット=ホレーニア『三本羽根』(2017)


第二回京都文フリ新刊。36ページ。愛娘を女王に謁見させようとバッキンガム宮殿に向かう長蛇の馬車の列に並んだジョージ・アルンヘム。ところが近衛将校から突然待ったがかかった。娘のスキャンダルが発覚したというのだ。馬車を列に残したまま娘とともに真相究明に走り回るジョージ。果して馬車が宮殿に着くまでに汚名はそそがれるか。「暁の死線」風タイムリミット・ドッペルゲンガ―小説(7冊)。


フリードリッヒ・フレクサ『伯林(ベルリン)白昼夢』(2004)


32ページ。夜汽車でベルリンにやってきた主人公は、商店街のあるショーウィンドウに、どう見ても生きている人間としか思えないマネキン人形が飾ってあるのを見る。店の者がやってきて、これは生きているんですよ、と言い、主人公を不思議な研究室に案内する……子不語の夢―江戸川乱歩小酒井不木往復書簡集において、不木が乱歩の「白昼夢」に関連して言及した作品の原型(7冊)


ジョン・アディントン・シモンズ『ギリシア倫理の一問題』(2016)


56ページ。全20章のうち最初の10章(全体の約1/3)の訳。世界史上古代ギリシアにしか見られない少年愛の独自の形態は、いかなる源から生まれ、いかに発展し、いかに堕落していったか。同性愛者であった世紀末文人シモンズが、博識と情熱を傾け滔々たる美文で説く。ミステリ界では乱歩の鍾愛の書として有名。(7冊)


スタニスワフ・レム『発狂した仕立屋 その他の抜粋』(2006)


114ページ。レム追悼として編まれた書。『技術大全』『偶然の哲学』『対話』のさわりにインタビューを収録。熱い批評魂が胸を打つ。なかでもレムが自分のライバルとみなすウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を縦横に論じる『偶然の哲学』の一節は特に読ませる。(15冊)


フェルデナンド・ボルデヴァイク『クワエウィース?』(2010)


32ページ。とある避暑地のはずれにある一区画には「クワエウィース?」(「汝は何を望むか」という意味のラテン語)という疑問符入りの街路名がついていた。そこに住む老人はときおり自宅のバルコニーに立ち、謎めいた演説をぶつので有名だった。両親とともに避暑にきていた少女パンジーは老人の奇妙さに惹きつけられ、やがてその秘密を知る…… オランダ幻想小説の底力をまざまざと知らしめる隠れた傑作。(7冊)


スタニスワフ・レム『エフ氏』(2010)


28ページ。ドイツ語でのみ発表されたレム幻の短篇。今の時代に「ファウスト」を書くとすればどういうふうに書きうるか、という問いを自分に課したレムはあるプロットを構想するが、それは結局書くことなく終わった……。ボルヘスのある種の作品と同様、「書かないことによって書かれた」短篇(7冊)


アレクサンダー・M・フライ『戦利品』(2014)


28ページ。何といったらいいかよくわからない変てこりんな短篇だが、反戦怪奇小説? ドイツのウィアード・テイルズといわれる怪奇小説専門雑誌「蘭の苑」傑作選第一巻。第二巻以降もいずれ出したいものだ。(7冊)


ルートヴィヒ・ティーク『青い彼方への旅』(2011)


154ページ。アッシャー館のあるじの愛読書として名のみ有名だった作品の完訳。抜粋が荒俣宏怪奇文学大山脈 (1) (西洋近代名作選 19世紀再興篇)の第一巻におさめられているが、この作品の奇妙奇天烈さはとても抜粋などでうかがい知れるものではない。(10冊)


名状しがたい旧巻(2011)


120ページ。ミスカトニック大学さえ所蔵していない名状しがたい本。(10冊)

では皆さん、4月16日(日)に金沢で会いましょう!