the Glory that was Rome

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)

ゾティーク幻妖怪異譚 (創元推理文庫)


……大陸ゾティークの南、ヨロスの地ではそのころ悪疫が蔓延していた。砂漠の風とともに到来したそれに罹ると、皮膚はたちまち仄かな光沢を帯びた箔と化し、全身が白銀の甲冑のようになったあげく、地に転がり息をひきとる。この銀死病に臣民がことごとく死に絶えたなか、うら若い王フルブラだけは魔法の指輪のおかげで難を逃れ、三人の奴隷とともに海に漕ぎ出した。
ところがフルブラの漂着したのは「拷問者の島」として忌まれるウッカストログであった。ここの島民は性きわめて残虐にして、よそものをいたぶり苛むのをこよなき愉しみとするという。
「金メッキされた仮面のような」かんばせのウッカストログ王イルドラクにねんごろに迎えられたフルブラは、イルドラクみずからの手によって、腕によりをかけた拷問を三日にわたって……なんでしょうかこの腐女子的な妄想は(<たぶん偏見)。筋もえぐいけれど、それを綴るのが大瀧氏の絢爛文体なのだから、それはそれはもう大変なことになっています。(ついでに表紙画も、狙ったわけではないだろうが秋吉巒を思わせる雰囲気だ〜)
まだ読んでないけれども扉の紹介文によれば、「死体を喰らう神が君臨する街」や「人体が接ぎ木された奇怪な庭園」が出てくる話もあるそうだ。

こういう白昼夢に日夜溺れるクラーク・アシュトン・スミスとはどんな人かといえばこんな人らしい(本書解説に掲載された写真をコピー)。

風貌は日本でいえば渡辺温ちゃんに似てるかな。

もう一枚本書よりコピー。


絵に描いたようなダンディです。実直な田舎者といった感じのご両親に挟まれて浮きまくっているのが笑みを誘います。

それにしても、M.P.シールの「ゼリューシャ」やマルセル・シュオブの「黄金仮面の王」などと響きあうこんな作品群が、新大陸に生まれていたとはちょっとした驚異だ――いや、大先達ポーを生んだ国だから、それほど不思議とするにはあたらないのかもしれないけれども――。そしてシールにもシュオブにもポーにも共通しているのは古代へのやみがたい憧れ、というか渇望だ。スミスも例外ではない。解説によれば「すらすら読んで楽しめる程度に」ラテン語を独学で修得し、ブリタニカを二度にわたって精読したという。